オタクにとって「推し」とは何か

アイドルオタクは「自分の好きな/応援しているアイドル(またはアイドルグループのメンバー)」を指して「自分はあの娘を推している」と意思表示をする。それは「推しメン」あるいは「推し」と称されることが多い。例えば僕は「奥津マリリ推し」だし「フィロソフィーのダンス推し」だし、または「BiSHアイナ・ジ・エンド推し」でもある。
「○○を応援している状態」を簡潔に表す言葉だ。

二次元のアニメやゲームのキャラクターに対しての好意的な表現は、もはやほとんど死語だが「萌え」と言われた。
オタクは自らをオタクと称するとき、オタク趣味ではない人を「一般人」と指す。「一般人」と自分たちオタクは違う(相手は同好の士ではない)という認識を持っているから、あちらとこちらを分別をする。
そのためにジャーゴン(同じグループの間でしか通じない言葉)を使うのは、とても分かりやすい分別の方法だ。

ところが言葉とは曖昧で、使う人によって意味が増えて(あるいは元々の意味を失って別の意味を持つ)ようになる。
ということを、吉本隆明「悪人正気」を読んだときにわかった。
「カリスマ」は今や「カリスマ主婦」「カリスマ美容師」に代表されるように「1つ抜きん出ている人」を指す言葉としてカジュアルに使われているが、元々は思想家など特定の人物においてのみ使われる言葉だった。それが戦後、使用される領域が広がったということを吉本隆明は言っていた。

それは「推し」というアイドルオタク由来の言葉をアニメやマンガの好きなキャラを「推し」と呼ぶように、このところなっていると気づいた。
目くじらたてるほどではないと分かっていても、なんとも言えない違和感がある。